メモリオーディオプレイヤー
パソコンを使っている人ならすっかりお馴染みのMPEG-1 Audio Layer3ことMP3、これを再生する携帯プレイヤーが初めて登場したのは1998年5月頃(Akiba Hotline!)。その後著作権保護に弱い欠点と共にAACだのTwinVQだのWMAだのとさまざまなフォーマットが現れ、それを記録するためのメディアも内蔵メモリの他にコンパクトフラッシュだのスマートメディアだのMMCだのSDメモリカードなど乱立してます。
そして、例によって独自規格大好きなSONYもフォーマットとしてATRAC3、メディアとしてメモリースティックを規格化し、それらを組み合わせて昨年末、NW-MS7として発売しました。当時も欲しいなぁ…と思ってたのですが、いかんせん初物だったのと再生時間の短さで結局買わずじまい。
その後IXY DIGITALを購入してコンパクトフラッシュのメディアを購入したのでKANA2000にも惹かれたのですがあまりのダサさにいくら安いと言っても…てな状態のうちに、職場でNW-E3が増殖し始めて、やっぱりこれかな…と思っていた時に発表されたのが、このNW-MS9だったわけです。性能は申し分なし、価格は…なのですが、ここはやむなし。早速発売日に購入してきました。
本体の使用感
本体での充電は出来ず、別途急速充電器が付属しています。1.5時間充電して10時間の連続再生が可能です。
剛性もアルミ筐体を使っているので十分。質感もいい感じに仕上がっていると思います。SONYのロゴやウォークマンのマークはきちんと彫り込まれていて(ダイアカットによるものとか)小さくても抜かりは無い様子。
下から握ると、ちょうど親指がこのスイッチの位置に来て、そのまま押し込むと再生/停止、上に押すと早送り/次の曲、下に押すと前の曲/巻き戻しと、完全に片手(と言うか親指だけ)で操作できます。
バックライトのON/OFFも可能になっていますし、右にアイコンで表示されているようにリピート/シャッフル再生や、低音増強のMEGA BASSも2段階で設定可能と、MDプレイヤー等と遜色ない再生機能を備えています。
ただ、どうやらこの付属ヘッドホンがちゃんとしたやつじゃないので、何だかシャリシャリした音になってしまってます。主観的に言わせて貰うと、個別に3000円ぐらいのヘッドホンを買って(あるいはSony Styleのヘッドホンセレクトを利用)、MEGA BASSを1段階だけ効かすと、丁度いい感じになると思います。
(2000/12/10)
ATRAC3
これを含めて、ソニーのメモリオーディオプレイヤーで使われているのがATRAC3(Adaptive TRansform Acoustic Coding 3)です。これはMDに使われているATRACをさらに改良して圧縮率を2倍に高めたもの。これをMDに転用して、MDLPという規格が作られています。
このプレイヤーでは66、105、133Kbpsと3つのフォーマットを使うことが出来、標準装備の64MBの中に60分(133Kbps)、80分(105Kbps)、120分(66Kbps)と録音時間と音質をトレードオフして使う形になります。
実際にそれぞれエンコードしてみたのですが、MP3と違って後発だけあり、ビットレートを一番下の66Kbpsに落としてもそれなりに聞こえる音にはなります。丁度、MP3とWMA両対応にして、低ビットレートではWMAを使う…のと似たような考え方も出来そう。
ただ、ATRAC3自体がMP3と違って少し原音と異なる音にエンコードする(様な気がする)ので、そこに違和感を感じる人も多いかも。私も最初はなんじゃこりゃ~って感じでしたが、ヘッドホンの交換&MEGA BASS&慣れ(^^;で、すぐに適応しました。まぁ、後続機種ではさらなる音質向上を期待しますが。
OpenMG Jukebox
2.0からWindows2000に対応しているのですが、残念なことにNTFSは非対応です。どうやらファイルの認証時に、ディスクのどの位置に保存されているか、そういった固有情報を用いているらしいので、ある程度環境に依存してるのでしょう。
名前にもついているOpenMGとやらがソニーが決めた著作権保護技術で、暗号化されたATRAC3ファイルとMagicGateメモリースティックの組み合わせでSDMI(Secure Digital Music Initiative)の定めた基準を満たしている…そうです。まぁハッキリ言って、利用者にとっては面倒な手順があるだけで利点は少ないのですが、まぁ仕方ないですね。
…PC1台とプレイヤー1台、この組み合わせで使うのが原則ですから。
ベンチマーク
著作権保護のための不便さはさておき、単純に統合ソフトとしての使い勝手はどうなのか、性能を調べてみました。環境はCPUがPentium3/933MHz、CDドライブがDVD-105S 、OSがWindows2000となっていて、比較対象としてCD2WAV32 R3.15+午後のこ~だ Ver2.36(CBR MSステレオ 心理音響ON MMX&SSE)とMP3エンコードとしては定番の組み合わせで、使ったCDはdelicious way/倉木麻衣です。
ATRAC3 | MP3 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
全曲 | 総サイズ | 1曲 | 全曲 | 総サイズ | 1曲 | ||
66Kbps | 4分02秒 | 21.6MB | 17秒 | 64Kbps | 5分30秒 | 21.1MB | 13秒 |
105Kbps | 3分44秒 | 34.4MB | 17秒 | 96Kbps | 5分25秒 | 31.6MB | 14秒 |
133Kbps | 3分57秒 | 43.5MB | 17秒 | 128Kbps | 5分40秒 | 41.7MB | 15秒 |
なお、1曲だけWAVファイルを作成してエンコードのみを行うと、さすがに午後のこ~だも気をはいています。ビットレートによる速度差は両方とも殆ど無い様子で。MP3→ATRAC3の変換も全く同じ早さで行い、VBRなMP3も問題なく、タグも読み込んでくれます。ただ、曲の長さを読み間違える事があるようですが、VBRとの絡みでしょうか?
OpenMGJukeboxはもちろんCDDBに対応しており、タグを自動的に認識したり、CDNOWでの検索によってさらに細かいデータまで表示することが出来ます。個人的にはジャケットを取り込めたらよかったのですが、さすがにそれは無理のようで(ジャケット画像を用意して、指定のファイルを表示させるのは可能)。
1分07秒 | 1分15秒 | |||
---|---|---|---|---|
← | PC | → | ||
← | ||||
6秒 |
チェックインの方はプレイヤー側のデータ削除と、それを元データに反映させるだけなので、殆ど時間はかかりません。
結論
初代MS7から延々言われ続けていますけど、OpenMGだのATRAC3だのと言った著作権保護機能、それらが煩わしい人は気になるでしょうけど、CDからエンコードしたデータをプレイヤーに転送して聴く、つまり普通に使う分には問題ないでしょう。特に、OpenMG Jukebox2.0によって付属ソフトの性能はほぼ理論値まで向上したと思われます。これらの著作権保護機能を外せば…いやいや、それは無理でしょう。
懸案だった連続再生時間も、他のウォークマンと共通のガム型充電池を使うことによって10時間と、つい充電を忘れてしまっても数日は使える長さに。まだまだMGメモリースティックは高価なので複数枚持つのは大変ですが、最近CompactFlashが値下げを行ったので、将来的には値下げも期待できます(今は最大64MBだが、ハード的には128MBまで対応)。
一番のネックは、やはり価格でしょうか。低価格なRio600やHyperHyde USBを見てしまうと、いくらいいのは分かっているとはいえ、倍近い価格差を見ると…う~ん、値段相応な品質なのは分かっているのですが、こればかりは難しいです。
…と言うわけで、お金持ちな人や、ソニー党な人、他人に自慢したい人(これは大きいです(^^;)にとっては、それだけの価値はある製品かと。音質はいわずもがなです。
(2000/12/11)
128MBに増設
さて、ロードマップ通りに2001年4月に発売される事になった128MB版MGメモリースティック・MSG-128Aなのですが、当初は4/10な発売予定がMG版のみ直前になって4/20に延期となり、それでも入荷が遅れたらしく、4/21に一部の店舗に少量入荷しました。どうもMGメモリースティック全体が品薄になっていた様です。
まぁ、現状でMGメモリースティックが必要になるのはNW-MS7、NW-MS9、そして白クリことPEG-N700Cぐらいしか無い(デジカメ用だと著作権保護は要らないので普通のメモリースティックでよい)事を考えると、生産量に差があるのは分かります…が、スマートメディアや対抗のSDカードがID付きが定番になっている事を考えると、現状のMagicGate対応、非対応でそれぞれラインナップを分けるんだったら、いっそのこと全商品MagicGate対応にしてしまった方がラインナップ的にも分かりやすいし、量産効果も期待できる…と思うのですが。少なくとも、こんなFAQを用意する必要は無くなりますし。
このパッケージ、リサイクルの事を考えていろいろ表示がしてあるのですが、「この台紙は、サトウキビの絞りカスから作られた非木材紙を混ぜてできています。ちょっと自然の事を考えてみました」だそうで。「ちょっと」てな控えめな点がよさげ。
これだけ小さくしようと思ったら、色々と大変なんでしょう。
今まで64MB版だと60分しか入らなかったので、105kbpsで使用していたのですが、例えポータプルプレイヤーとしても音質にはこだわりたいですし。これで個人的には理想にかなり近づいたかも。
ちなみにこの128MB版、C404S “DIVA”でも使えました。事実上本体にしか貯められないという点を考えると、こちらの方が必要性は高いかも…本体よりも高いですが(^^;。
Windows XPへの対応
購入した時点でのOpenMG JukeboxはVer.2.0。一応Windows2000にも対応していたのですが、前述した通りNT系の特徴の一つでもあるNTFSには非対応でした。まぁFAT32で使えばいいのですが、MPEG2でビデオキャプチャするとFAT32の限界である1ファイル4GBの壁を越えることがたびたびありますし、早くNTFSに対応して欲しいな~と思っていました。
70MBの無償DL版と、1100円払ってCDを送ってもらう有償CD版があるのですが、今回はDL版を選択。これはCD版と違いCD情報の入っているHDD CDデータベースが使えないのですが、インターネット経由でCDDBにアクセスできれば問題なし…ってどこにつながっているんでしょ。CDNOWが停止してから使っていないのですが、久しぶりに使ったらさっくり見つかったし…あ、「インターネットCD情報サービス」からか。DLしてきたファイルにはフルセット入っていて、付属CDからのアップデートという形でなく、DLしたファイルのみでインストール可能です。
外見もKATANAなる黒を基調としたskinがあったのでさっくり変更してみました。なかなかしまりますな。
すでに付属のマジックゲートメモリを128MBにしたNW-MS11(つまり私の今の状態と同じ)や、USBクレードルのついたNW-E10とかも出てきましたが、とりあえずこのまま使っていけそうです。