死の蔵書 / ジョン・ダニング (早川書房)
何かのランキングで上位に来ていたという記憶があったので、少しは期待して読んでみたのですが、得てして期待というものは裏切られるためにあるのかもしれないと、今更ながらに思った一冊。
確かによくできた話しだと思うし、途中で主人公の立場がガラッと変わってしまうのは新鮮だったけど、登場人物の描写がちょっとおざなりな感じがして。実際のストーリーとあまり関係ない話を同時進行で進めていくってのはありがちだけど、この作品にとっては不要だったような。止める理由のためだけですし。
評価 ★★★☆
長い長い殺人 / 宮部みゆき (光文社文庫)
元々は連載小説だったそうで、一話完結型。事件の登場人物、一人一人について物語が続き、やがて最後に一つにまとまって真相が明かされると。
主人公について語るのが、彼らが持っている財布。誰もが持っていて、しかも持ち主の特徴がはっきり出る財布に語らせるってのは楽しいアイデアだと思います。最後のどんでん返しもなかなか。
評価 ★★★★
オペラ座の怪人 / ガストン・ルルー (創元推理文庫)
映画や舞台の原作になったりして有名な物語ですけど、昔の話だけあってやっぱり読みにくかったです。ちょっと盛り上がりに欠ける部分もあって、個人的には何とか我慢して読了したという感じ。
まぁ、舞台化すればおどろおどろさも手伝って、それなりに面白い話になるんではないかな。
評価 ★★☆
占星術殺人事件 / 島田荘司 (講談社文庫)
御手洗潔シリーズの第一作になるのかな。戦前に発生した猟奇殺人事件を、新たな資料を基に推理していく物語。例によって「読者への挑戦」もあったりします。
読んでいるうちに気付いたのですが、これって漫画「金田一少年の事件簿」で初期に出てきた事件、確か山村に規則的に建てられたいくつかの館での連続殺人事件でしたっけ、それの元ネタでしたね。トリック自体はそのままだし、一時盗用ではないかと騒がれましたっけ。
だから、すぐに消去法で犯人が分かってしまいました。話自体は登場人物の魅力もあってそれなりに面白かったですけど…。
評価 ★★★★
催眠 / 松岡圭祐 (小学館文庫)
自分は宇宙人だと名乗り異常な能力を示す女性、彼女を利用する周辺の人々、そして彼女の正体は…。興味本位で語られることの多い催眠とカウンセリングの実体を描いた物語。映画化された内容(サイコホラー)とは違って、精神の問題について深く追求した話になっています。
もちろんフィクションなんですけど、それなりにリアリティがあって面白かったです。実際にこういう事が可能かどうかはわかりませんけど、TVで見るような派手な催眠誘導とはまた違った内容が。
評価 ★★★★
笑わない数学者 / 森博嗣 (講談社文庫)
犀川創平&西之園萌絵シリーズの第3弾。文庫本で揃えているので、遅蒔きながら読み進めています。
今回のは館モノだったのですが、結構分かりやすい謎で。オリオン像が消える謎はすんなり解けたのですが、実際の殺人トリックは思いつきませんでした。後から部屋の配置を見れば、結構すんなり理解できて。これなら分かったかも。
数学で良く用いられる「定義」ってのがちとこの話を分かりにくくしてるかもしれないけど、以外と簡単な話だったり。結局あの部屋にいたのは誰だったんでしょ?。
評価 ★★★☆
龍の契り / 服部真澄 (詳伝社)
ある機密文書を巡っての、イギリス、中国、アメリカ、日本による争奪戦を描いた国際謀略サスペンス(!?)なる物語。確かに大きな話なんだけど、ちょっと話にリアリティが感じられないと言うか。黒幕しかり、実際の計画しかり。
そもそも、昔のそんな条約でしばられたりしちゃうものかな?。確かに歴史の闇として非難はされるかもしれないけど、それが現代に影響を与えるほど有効とは思えないし。あと、最後があっけなさ過ぎ。「監視カメラは見ていた」ってそれはないっしょ。もうちょっと痛み分けで終わらないと。
評価 ★★★
グイン・サーガ(67) 風の挽歌 / 栗本薫 (早川書房)
いよいよグインが本編に復帰。今回はトーラスで話が進んでいきます。「そういえばそんな話あったなぁ」という様な初期の話も出てきたり。あの2人は他の兄弟よりまともなので、そんな彼らが本編に絡み始めるのは嬉しいです。
最後にちらっと出てきますけど、これからはそのネタで進んでいくのでしょうか?。今更出てきたって事は、誰かが後ろで差し金をしていると思われるのだけど、一体誰が…。
評価 ★★★☆
レベル7 / 宮部みゆき (新潮文庫)
失踪した女子高生が残した言葉、記憶喪失で目覚めた男女の腕に記されていた言葉…「レベル7」。それぞれの謎を解き明かしていくうちに、巻き込まれていく凶悪事件…。題名からして、SFチックな話なのかと思っていたのですが、ちょっと社会派の臭いもする、ミステリーでした。
ラストのどんでん返しはある程度予想がついたのですが、そこに行くまでの導入部はさすが。計画がかなり突拍子もないものですが、設定を考えればそれも納得。最初に設定を考えて、それをもとに物語をつくっていく、典型的な話かも。
評価 ★★★★
見張り塔から ずっと / 重松清 (新潮文庫)
日常生活の中で、ある3組の夫婦に起こった出来事を書いた、3つの短編集。山あり谷ありと言う話ではないのですが、その淡々と進んでいく話の中で、徐々に変化していく人々が、逆にある種の怖さを感じさせるような内容になっています。
どんな出来事も、このように日常生活の延長線上にあるのかも。
評価 ★★★☆
そして夜は甦る / 原尞 (ハヤカワ文庫)
私立探偵が手がけていた行方不明者の捜索が、やがて過去の狙撃事件に繋がっていく…これが著者の長編デビュー作らしいですが、それにしてはよく考えられた話だと思います。主人公のキャラクターがハッキリしていた分、登場人物に助けられた部分はあると思いますけど。
でも、オチはちょっと強引かな。そこまで偽証を重ねるのは、かなり難しいことだと思うし。
評価 ★★★★☆
私が殺した少女 / 原尞 (ハヤカワ文庫)
誘拐事件の共犯者に仕立て上げられた私立探偵が、その汚名をすすぐために捜査し、真相を暴いていく物語。やっぱり、結構近い人間の犯行だったな…と思いきや、最後にもう一波乱あって、そちらは予想外なので楽しめました。でも、かなり限定された条件じゃないと、こんなに上手く行かない気もしますが。
確かに、直木賞を取っただけのことはあるかも。
評価 ★★★★